【LIBRARY】『ひと アート まち』 2008年3月号
ひと アート まち
【2008年3月号】
何百万本ののぼり旗よりも
人は生きていくのに、一日約2キロの食べ物と水、そしてその10倍の20キロの空気を体の中に毎日入れていく必要があるらしい。
ご存知のように、人は酸素を吸い二酸化炭素を吐き出す生き物である。逆に植物である木は二酸化炭素を吸収し、きれいな酸素を出してくれる。
それでは、人が一日呼吸をするには木はいったい何本いるのだろう? ある研究によると一人23本の木が必要という計算結果がある。そのうえ人は地面をひたすら掘りおこし、何を作るにも石油やガスや石炭を燃やし二酸化炭素を出し続ける。そんな文明生活をも支えていくのには、日本人ひとりあたり一日なんと376本の木が必要となるらしい(アメリカの生活では約800本が必要)。
日本の国土の67%は森林である。しかし内容のよい森林はもう殆ど残っていないという、またその約8割は早急な手入れを必要としているとも聞く。
29日から「全国都市緑化ぐんまフェア」が開催される。もしかすると角材に針金で縛られたプラスチックと化学繊維の幟旗を並べるよりも、開催を機にひとりひとりが、一本の苗木を植え始めてみる事こそが必要なのかも知れない。
宮沢賢治の童話「狼森と笊森、盗森」は、人と自然との交歓の物語である。
大昔、岩手山の麓の森に、農民たちがやって来て、森に向かって「畑起こしてもいいかあ。」と大声で尋ねる。すると森は「いいぞお。」と応じる。家を建てるのも、木を貰うのも、森に尋ねて了解を得る。農民は土地を耕し、種を蒔き、松を伐って薪をつくる。やがて穀物が実るとその収穫物を森に届けに行く。
賢治はきっと大昔の日本人と同じように、森をかけがえのない友としていたのであろう。そしてまた人間が暮らしているからこそ、いっそう美しくなっていく景色があるという事も知っていたに違いない。
フェア開催と合わせて、フリッツ・アートセンターでは、長年の夢だった1年がかりのプロジェクト「宮沢賢治絵本原画展」が始まる。あべ弘士の「なめとこ山の熊」。荒井良二の「オツベルと象」。川上和生の「やまなし」。スズキコージの「注文の多い料理店」とつづく賢治の九つの物語を、日本を代表する九人の絵本作家の作品で紹介していく。
2年振りの開園となる「敷島公園ばら園」と併せて是非お出かけ下さい。
(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年3月14日 )
【2008年3月号】
何百万本ののぼり旗よりも
人は生きていくのに、一日約2キロの食べ物と水、そしてその10倍の20キロの空気を体の中に毎日入れていく必要があるらしい。
ご存知のように、人は酸素を吸い二酸化炭素を吐き出す生き物である。逆に植物である木は二酸化炭素を吸収し、きれいな酸素を出してくれる。
それでは、人が一日呼吸をするには木はいったい何本いるのだろう? ある研究によると一人23本の木が必要という計算結果がある。そのうえ人は地面をひたすら掘りおこし、何を作るにも石油やガスや石炭を燃やし二酸化炭素を出し続ける。そんな文明生活をも支えていくのには、日本人ひとりあたり一日なんと376本の木が必要となるらしい(アメリカの生活では約800本が必要)。
日本の国土の67%は森林である。しかし内容のよい森林はもう殆ど残っていないという、またその約8割は早急な手入れを必要としているとも聞く。
29日から「全国都市緑化ぐんまフェア」が開催される。もしかすると角材に針金で縛られたプラスチックと化学繊維の幟旗を並べるよりも、開催を機にひとりひとりが、一本の苗木を植え始めてみる事こそが必要なのかも知れない。
宮沢賢治の童話「狼森と笊森、盗森」は、人と自然との交歓の物語である。
大昔、岩手山の麓の森に、農民たちがやって来て、森に向かって「畑起こしてもいいかあ。」と大声で尋ねる。すると森は「いいぞお。」と応じる。家を建てるのも、木を貰うのも、森に尋ねて了解を得る。農民は土地を耕し、種を蒔き、松を伐って薪をつくる。やがて穀物が実るとその収穫物を森に届けに行く。
賢治はきっと大昔の日本人と同じように、森をかけがえのない友としていたのであろう。そしてまた人間が暮らしているからこそ、いっそう美しくなっていく景色があるという事も知っていたに違いない。
フェア開催と合わせて、フリッツ・アートセンターでは、長年の夢だった1年がかりのプロジェクト「宮沢賢治絵本原画展」が始まる。あべ弘士の「なめとこ山の熊」。荒井良二の「オツベルと象」。川上和生の「やまなし」。スズキコージの「注文の多い料理店」とつづく賢治の九つの物語を、日本を代表する九人の絵本作家の作品で紹介していく。
2年振りの開園となる「敷島公園ばら園」と併せて是非お出かけ下さい。
(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年3月14日 )

