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【LIBRARY】『ひと アート まち』2008年10月号

ひと  アート  まち

【2008年10月号】

弱くて不足だけれども

 インターネットによる最新の〈最近増え過ぎだと思うランキング・ベスト20〉によると、「ケータイの新機能」「芸能人参加のクイズ番組」「クレジット機能付会員カード」「電車で携帯ゲームをする人」「テレビのテロップ」「デジカメの解像度」「歯科医院」「コンビニ」などのなかで「おバカタレント」が1位になったらしい。
 この感じ方は人それぞれだろうけれど、どれも「そういえば」と思うものばかりだ。自分の回りでも最近増え過ぎだぞって感じるものは「パチンコのCM」「自分が鬱だと言う人」「バナナダイエット実践者」「監視カメラ」「回り寿司」「コインランドリー」などなど、特に「携帯電話の中継タワー」は、電磁波の人体への悪影響が指摘され世界中で様々なトラブルが続出しているなか、ビルの屋上や駐車場の片隅、あるいは山間の田んぼの中にと、3本に分かれた奇妙なアンテナが所かまわずニョキニョキと雑草のような異常な増え方で、なんだか怖くなってくる。
 確かに中継タワーが出来たおかげで、携帯はどこにいてもよく繋がるようになった。ただ同時に日本中いや世界中のどこにいてもタワーの網の目と電磁波の放射からはもう逃れる事は出来ないのかも知れない。
 戦後の日本人は、増やすという事だけに悦びを感じてきたのだろうか。増え強くあるだけの社会が、必ずしも幸福な社会ではないにもかかわらず、それを立ち止まって考えることをしなかった社会。惰性で増えること強くなることこそが善と決めつけて増やしてはいけないものや弱いものへの想像力を停止した社会。そうして農薬の使用量も、洗剤の使用量も、添加物の使用量も、ダイオキシンの排出量も世界一にした社会。そして今はそのことに気づき始めた人たちが増え、みんなぼんやりと不安になっている社会なのだろうか。
 前橋市立中央小学校で「トヨタ・子どもとアーティストの出会い in ぐんま」が始まる。29人の小学3年生を相手に日本を代表するコンテンポラリーダンサーの北村成美が一週間前橋に滞在してダンスワークショップを開く。下見のワークショップで北村は一言も喋らなかった。突然ただひとり跳ね、転がり、踊った。はじめはキョトンとしていた子どもたちも次第に伝染したようにそれぞれが踊る人になっていった。弱いからこそ伝わるものもあり、不足だからこそ美しくなれるものもあると思う。
 11月3日には「前橋こども図書館」において「図書館のダンス」を発表する。「北村成美とおどるまえばしのこどもたち」の弱くて不足だけれど精一杯のファインプレーにご期待ください。


(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年10月10日)

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