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【LIBRARY】『ひと アート まち』2008年12月号

ひと アート まち

【2008年12月号】

こどもの時間 おとなの時間



 
この時期になるとつい「歳をとると一年が早くなって」と挨拶代わりに言ってしまうのは一体何故だろう。
 科学雑誌ニュートンの特集「時間とは何だろう」によると、子どものころは、毎日の出来事や想像することが新しい経験で、そのひとつひとつが記憶となっていく。反面大人になってからの経験は、過去の経験と同じようなことが多くてパターン化され、記憶する量が実質的に少なくなって、子どものころよりも大人になってからの方が、時間を短く感じてしまうかららしい。
 他にも脳細胞の分裂速度や代謝の影響など、諸説があるが「なるほどな」と納得してしまった。 
 たしかに子どものころは一日がとても長かった。玩具やゲームがなくても、空き缶や布切れ、そして空き地を見つけては新しい遊びを発明していつまでも遊んでいた。また珍しい出来事がなくても、雲を追いかけてはアフリカの象を想い、夜空を見上げては星と星を結んで怪物を想った。想像力がすべての物にいのちを吹き込み、物語となって記憶されて、同じ24時間を永遠だとも感じさせてくれた。
 大人になるということは、雲は雲だし、星は星だとすぐさま受け入れる、あるいは無視することなのだろう。
同時に想像する時間も必要ない程に世の中が便利になって、遠い友の消息を想う前にケータイを開け、海外の災害を憂う前にテレビのリモコンを押し、食べたいものを欲する前にコンビニに走るようになっている。
 ただ子どもも最近では、学校の行事に塾に習い事、テレビにケータイでの付き合いとずいぶんと忙しそうだ。月にウサギが住んでいるかなんて想っている時間なんてないのかも知れない。
 街の中からいつまでも想像していられる場所もなくなっていく。原っぱの土管、川辺の土手、駅前のベンチにデパートの屋上、喫茶店に本屋さん、そして映画館・・・。
 シネマテークたかさきの茂木正男さんが亡くなった。茂木さんにとって映画を観るのは眼でもなく、耳でもなく、想像力だったのだろ。だからきっともう一度仲間といっしょに銀色に輝く原っぱを作ったのだと思う。最後の最後に蕎麦を食べながら「本屋がしたいんだ」ってまだ夢見ていたあの笑顔を忘れてはいけない


(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年12月12日)



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