【LIBRARY】『ひと アート まち』 2008年4月号
ひと アート まち
【2008年4月号】
KYですが、なにか!?
「史上最悪、自殺者がついに3万人超」という報道の数値は、実数であって、自殺が増えたか否かに関しては、科学的にはほとんど意味がないらしい。
世の中が病んで来たと不安を煽るのには恰好の数値だけれど、増減を知るには、人口十万人あたりの比率「自殺率」や、国際比較にも利用され年齢の構成も考慮に入れた「年齢標準化自殺率」が必要で、その1955年からの比率によるとなんと自殺者は、男女の平均で大幅な減少傾向にあるのだという。
また、テレビのワイドショー等で毎日何度も繰り返される「少年犯罪の急増」も、最新の「犯罪白書」によると、殺人で検挙された少年の数は1960年代には200〜400人台で増減を繰り返していたが、2007年は73人だったらしい。
親殺しに子殺し、子捨てに親子心中、そして児童虐待に家庭内暴力。「崩壊する家族と地域社会」「現実と仮想世界」「格差社会のひずみ」「見えない動機」などと同じような分析が、同じような解説者によって果てもなく語られ、なんとなく憂鬱に、どことなく不安になっていたのは自分だけではないはずだ。
もしかすると今問題なのは、メディア等によって実際とは違う物語が刷り込まれ、知らないうちに一般通念となっていってしまっている事と、それに気づきながらもテレビに依存し思考を止める自分たちのずるさなのかも知れない。
「友だちは多い方がいい」「空気を読む(KY)こそが最善」「お金さえあればおおかたの問題はかたがつく」「老いは醜いもの」「結婚して家族をつくってこそ一人前」「肥満は美しくない」「自己決定、自己責任は当り前」・・・。
「自分と世間の中で固まる(けれどもなんの根拠もない)通念を疑うこと。」
唯識仏教の中に「一水四見」という教えがある。同じひとつのものでも、見る人、聞く人によってそれぞれ違った見方、感じ方があるということだ。視点をほんの少し変えてみるだけで、いつも見ているのに未だに見た事もないものが見え、聞いた事もない音が聴こえ、新しい自分にも出会えるかも知れない。
「人の行く裏に道あり花の山」って、自分は子どもの頃から、あまのじゃくで、人が南だと言うと北に向かって全力で走り始めてしまう性分である。だから今風に言えば「空気が読めない」。でもそれはそれでいいと思っている。あまりに今の日本は息苦しく、同じになる事ばかりを強いられるから。
(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年4月11日)
【2008年4月号】
KYですが、なにか!?
「史上最悪、自殺者がついに3万人超」という報道の数値は、実数であって、自殺が増えたか否かに関しては、科学的にはほとんど意味がないらしい。
世の中が病んで来たと不安を煽るのには恰好の数値だけれど、増減を知るには、人口十万人あたりの比率「自殺率」や、国際比較にも利用され年齢の構成も考慮に入れた「年齢標準化自殺率」が必要で、その1955年からの比率によるとなんと自殺者は、男女の平均で大幅な減少傾向にあるのだという。
また、テレビのワイドショー等で毎日何度も繰り返される「少年犯罪の急増」も、最新の「犯罪白書」によると、殺人で検挙された少年の数は1960年代には200〜400人台で増減を繰り返していたが、2007年は73人だったらしい。
親殺しに子殺し、子捨てに親子心中、そして児童虐待に家庭内暴力。「崩壊する家族と地域社会」「現実と仮想世界」「格差社会のひずみ」「見えない動機」などと同じような分析が、同じような解説者によって果てもなく語られ、なんとなく憂鬱に、どことなく不安になっていたのは自分だけではないはずだ。
もしかすると今問題なのは、メディア等によって実際とは違う物語が刷り込まれ、知らないうちに一般通念となっていってしまっている事と、それに気づきながらもテレビに依存し思考を止める自分たちのずるさなのかも知れない。
「友だちは多い方がいい」「空気を読む(KY)こそが最善」「お金さえあればおおかたの問題はかたがつく」「老いは醜いもの」「結婚して家族をつくってこそ一人前」「肥満は美しくない」「自己決定、自己責任は当り前」・・・。
「自分と世間の中で固まる(けれどもなんの根拠もない)通念を疑うこと。」
唯識仏教の中に「一水四見」という教えがある。同じひとつのものでも、見る人、聞く人によってそれぞれ違った見方、感じ方があるということだ。視点をほんの少し変えてみるだけで、いつも見ているのに未だに見た事もないものが見え、聞いた事もない音が聴こえ、新しい自分にも出会えるかも知れない。
「人の行く裏に道あり花の山」って、自分は子どもの頃から、あまのじゃくで、人が南だと言うと北に向かって全力で走り始めてしまう性分である。だから今風に言えば「空気が読めない」。でもそれはそれでいいと思っている。あまりに今の日本は息苦しく、同じになる事ばかりを強いられるから。
(掲載;朝日新聞 群馬版 2008年4月11日)

